恐怖の語部 第六怪
峠道のライダー
夏の間、どこの地方でもお祭りやイベントを開催していて、お祭り好きな若者・Aくんは友人たちを誘って開催地まで遠出して楽しむという趣味があった。
だが、今度はちがった。居住地から遠く、誰もAくんの誘いに乗ろうとしなかった。それに、今度の開催地までの道の途中に、二度とは戻れぬ迷い道が存在するという伝説の峠があるのだ。
バカバカしい、とAくんは思った。止める友人たちを振り切って、愛用のバイクで開催地へ向かった。休憩しながら乗って行くと、約三時間で着いた。
何だ。何も起こらないじゃないか。
Aくんはそう思った。確かに峠道はあったが、迷うことなく、ちゃんと目的地まで行けたのだ。峠道というものは一本道だから迷うはずはないと、たかをくくってもいた。
盆踊り大会は盛大だった。にぎやかな夜店と、心地よい太鼓の音、浴衣娘たちの盆踊り、最後は花火で盛りあがった。終ったのは、二十一時すぎ。蜘蛛の子を散らすように、群集がバラバラに帰る中、Aくんもバイクに乗って帰ろうとした。ひとり暮らしのアパートに帰り着くのは、夜中の十二時すぎだな、と考えながらヘルメットをかぶり、バイクを発進させた。
夜の涼しい風がAくんの体をなでつける。バイクのスピードが増すとともに、だんだん肌寒く感じるようになった。道は順調だった。案内板と国道と現在地を確認しながら、バイクを走らせていた。
だが、問題はそれから起こった。まもなく長い峠道に差しかかろうとする時、『道路工事中。迂回路↑』という看板がヘッドライトの中で浮かんだ。
おかしいな。来る時は工事なんてなかったのに……
不思議に思いながらAくんは、看板の示す矢印の通りにバイクを進行させた。だんだん田舎道になるようで、道が暗くなるばかりだ。
本当にこの道で大丈夫なのか。ちゃんと向こうへ着けるのか……
と、ふいに大きな十字路が眼の前に拡がった。国道も標識も案内板も何もないのだ。Aくんは困った。どっちへ進めばいいのか。
すると、前方からひとつのヘッドライトが近づいて来た。オートバイだ。たちまち十字路を横切ると、Aくんの横を通って、闇に消えた。
よし、前の方へ行ってみよう。そう決心してバイクを発進させた。しばらくは暗くて何も見えなかったが、また一台のバイクとすれちがったので、この方向でいいだろう、とAくんは安心してバイクの操縦に集中した。
と、その時!
道路の向こうに大きな穴が!
あわててブレーキをかけたが、スピードを出しすぎたために、バイクはスリップした。
「うわぁあああーッ!」
Aくんのバイクは穴の中へ落下した……
元来、この峠道にはバイクの幽霊が出るという噂が絶えなかった――
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